成果を出すひとは「なに」を見ているか?
ビジネスにおいて大きな成果を上げる人と、限られた成果しか上げられない人、どこに違いがあるのでしょう。
もちろんいろんな要素で差がついてしまいますが、今回は「ものの見方」について書いてみたいと思います。
成果を出すひとは「もの」の見方が違う
例えば、あなたが何かシステムを作るというプロジェクトに携わっているとしましょう。
- カネ
- 納期/スケジュール
- 品質
という、少なくとも3つの「視点」から、プロジェクトをコントロールしていかなくてはなりません。
時にはトラブルが発生し、早急な対応が求められることもあるでしょう。そんなとき、「視野」が狭ければ小さなトラブルにばかり気を取られ、全体の大きな問題を見過ごしてしまうかもしれません。
また、やっとの思いで対応策を講じ、あなたが報告書をまとめあげたとして、それを見た上司はすぐに首を縦に振ってくれるでしょうか?違う立場の人間がどのような「視座」でものを言ってくるのかを想像できなければ、この難関をスムーズに突破することは難しいでしょう。
そうです。ビジネスで成果を出すひととは、「視点」「視野」「視座」の3つの眼でものごとを見ることができる人なのです。
視点を変えて見る
視点とは、「何の、どこを見ているか」です。
どれだけ視点を変えながら仕事をするかで成果は変わってきます。
同じ風景の写真を前にしたとしても、人によって目が行くところや印象に残るところは違います。また、時間をおいて何回か見るとまた違ったところに目が行くかもしれません。同じものを見ていても、見ている箇所と見え方が違うのです。
例えば、『台風で飛行機が欠航となる』というこの時期にありがちな事象について、いろいろな視点を書き出してみましょう。仮に、羽田発・沖縄行きの飛行機とします。
- 旅行者は、沖縄で予約していたホテルに連絡しなければいけない
- オプショナルツアーを予約していたなら、それもキャンセルしなければいけない
- 沖縄へ出張予定だった人は、訪問先のお客様へ欠航となった旨を連絡し、リスケしないといけない
- 沖縄のホテル側は、来られなかったお客様のキャンセル処理とキャンセル料の調整をしないといけない
- 航空会社は、欠航に対するクレーム処理をしなければならない
- 航空会社は、欠航に対する振替え便の調整をしなければいけない
- 空港は、欠航によって離発着飛行機の予定が変わったので、空港内の飛行機の駐機場を調整しないといけない
- 羽田付近のホテルは、急遽宿泊する人の対応をしなければいけない
- 沖縄の彼女に会いに行く予定だった人は、彼女に電話して状況を伝えないといけない
などなど、これはごく一部ですが『台風で飛行機が欠航した』という事象を題材にしてもいろんな視点があります。
視野を広げて見る
視野とは、「どの範囲でものを見るか」ということです。
どこにフォーカスをあてるか、と言い換えてもいいでしょう。
また、一週間先、半年先、一年先というような時間的な範囲も視野と言えます。
サッカーで視野の広い選手が高い評価を受けるように、ビジネスの世界でも優秀な人は視野が広いです。もちろん、技術を突き詰めているスペシャリスト系の人でそうでない場合もあります。しかし、視野が狭いと狭いなりのマネジメントしか出来ませんから、リーダー・組織を率いる人は特に視野が広くないといけません。
では、視野が狭いとどういった問題に陥るのでしょうか?
視野が狭い人の多くは、些末な問題に力を注ぎすぎ、もっと取り組むべき大きな問題に気づいていません。だから、結果として成果が出ないということになります。残念なことに、こういうことはビジネスの場ではよく見かけます。
実は、視野は「木を見て、森を見ず」という言葉で表現されたりします。
このように言われるときは、たいてい前向きな評価ではありません。
視野が狭いと些末な目先の対応にばかり時間を費やして、本来手がけないといけない大きなものが疎かになってしまうのです。
些末な問題にとらわれている自分がいかに忙しくて大変であるかをアピールしても、まわりから見ると空回りしているだけですから、評価はもちろん同情すらもらえません。こうなってしまう人は、常にそういう感じだと思います。これがその人の行動様式・思考様式になってしまっているからです。
大きな成果を上げるには、まずその行動様式・思考様式から脱却しなければいけません。
異なる視座から見る
視座とは、「どの立場、どの場所から見るのか」ということです。
サッカーで例えてみましょう。同じサッカーボールを見ているにしても、
- 観客としてスタンドから見る
- プレーヤーとしてグランドの中で見る
- フォワードは自分が打ったシュートがゴールに向かうのを見る
- キーパーは打たれたシュートが向かってくるのを見る
- 監督としてピッチサイドから見る
など、いろいろな立場・場所からの見方がありますね。
ビジネスにおいては、組織における立場がおもな視座となります。
ビジネスの世界では、この視座の違いによっていろんな人がいろんなことを言ってくるものです。
同じ社内でも作業担当者の立場や上位マネジメントの立場では意見が異なりますし、お客さんの立場からだとさらに異なる意見になります。 だからこそ、相手の視座に自分を疑似的に置いたり、さまざまな視座に自分を置くことで、様々な観点からものを考えることができます。
そもそも、なぜ視座の違いで意見が変わるのでしょうか?
それは、あなたと上司では責任の範囲が違うからです。
その上司にとってはあなたの報告よりももっと優先すべき問題があるのかもしれません。他にもっと大きなトラブルを抱えていて、そちらにカネとヒトを回さないといけないこともあります。
誰しも自分は自分の責任を全うしなければいけません。
その責任によって戦いや軋轢が生じるのです。
意見が合わないことに対して戦うことは、それは別にいいと思っています。社内といえども戦いがあるのは必然です。プロとして自分の仕事を全うしようとしている証なのです。
しかし、視座をコントロールするスキルが上がると、上位マネジメントへの提案、報告のスキルも上がります。上位マネジメントが何を考えているか、何を言ってくるかを想定して話や資料を組み立てることができるようになるからです。
言われること、指摘されることを想定して論理展開をしておけば承認を取りやすくなりますし、完全にOKとはならなくても条件付きで承認が取れるようになります。
何よりも、却下となって承認取りにもう一度挑戦するとなると体力と時間がかかります。その時間をかけないということも大切です。
見方を変えるトレーニング
視点を変えるトレーニングは、身の回りで気軽にできます。
電車の中の吊り広告、テレビや新聞などのニュース、なんでもかまいません。目に付いたものを題材にいろんな視点で見つめなおしてみてください。これはちょっとした時間でできますので、トレーニングにはもってこいですね。
視野を広くするコツは、まず『全体の事象は何なのか?』という質問を自分自身に投げかけてみましょう。
例えば、前述した『台風で飛行機が欠航となる』という事象ですが、ざっと挙げるだけでこのような視野があります。
- 今日、欠航したのは1年のうちのたかだか1日。たいした問題ではない。
- 日本の空港で欠航したのは羽田発着の沖縄便だけ。大きな問題ではない。
- 今日どうしても沖縄に行かなければならなかった人にとっては唯一の日。大きな問題。
- 夏休みで沖縄に行こうとしていた人にとっては、1年の中の唯一の夏休み。非常に残念。
このように多くの視野があることに気が付きます。
どこにフォーカスを当てるか、なのです。視野を変えると同じ事象でも違った捉え方をすることができます。
視座を変えてみるのは、視点や視野に比べると少しイメージがつきずらいかもしれません。
特にあなたが若手の社員であればあるほど、会社の上層にいる人が何をやっていて、何を考えているかわからないでしょう。経営層の視座を妄想するにしたって、何かヒントは必要ですよね。
そんな人には『経営を見る眼』がおすすめです。若手が会社経営を学ぶエントリー本としては読みやすく、理解しやすいです。
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視点・視野・視座の違い
人によって視点と視野は違います。そしてその違いは、その人の視座から来ていたりします。この3つはどれも密接に絡み合っています。
例えば、通勤風景の話なんてわかりやすいかもしれません。
私は以前、お台場に通勤していました。お台場は知っての通りフジテレビや、レインボーブリッジ、ヴィーナスフォート、観覧車などがある超観光地です。お台場はそのような場所でわけで、私は観光客に紛れて通勤していました。
朝、東京テレポート駅で電車を降り、オフィスまで歩きます。
- 駅を出てからオフィスに向かう途中は、フジテレビ社屋が目に入ってきます。
- 帰りは、東京テレポート駅に向かうと、ライトアップされた綺麗な観覧車が目に入ってきます。
目に入ってくる、とあえて表現しました。
そうなのです。私の視界には入ってきますが、特にそこにフォーカスがあたっているわけではありません。私が見ているのは手元の腕時計と目の前の人の流れです。乗ろうと思っている電車に間に合うかと時計を見て、そして綺麗な夜景に見入って足を止めている人の間を縫って歩いています。
一方で、お台場に観光に来ている人たちは違います。
ライトアップで装飾された観覧車に見入り、それを背景に写真を撮ったりしています。彼らは駅とか時計とかは気にしていません。
最初に言った通り、その人の視座によって視点も視野も異なるからです。
仕事をする中で、自分と感覚の合わない意見に出くわすことは多々あるでしょう。
そんな時は、相手の視点・視野・視座を妄想してシュミレーションしてみましょう。きっと今まで自分が見えていなかったものが見えるはずです。
そんなあなたの視界の広がりが、成果に直結します。
ひとつの事象をひとつの視点、狭い視野や見解でしか見ることのできない人が出す結果はおのずと限定的となります。
視点・視野・視座のビジネスに必要な3つの眼を鍛えることで、ビジネスをより多面的に見ることができるようになります。