【Chapter 1】なぜ、その資料は 伝わらないのか ①~資料はビジネスの成果を左右するツール
そもそも資料とは何か?
ほとんどのビジネスパーソンは、資料というものにほぼ必ず接するでしょう。自分で資料を作って説明することもありますし、誰かが作った資料を読んだり、説明を受けたりすることもあります。
そして、資料というものはビジネスシーンにおいて、かなり大きな役割をしめているものです。
本書はそういった資料をどのように作成していくか、といった資料作成の基本について書いています。 これからその資料作成のテクニックを解説していきますが、その前にまず、「資料」とは何か?というところをきちんと整理しておこうと思います。
「資料」というと、パワーポイントで作った提案書や説明資料、というイメージが湧いてくる人が多いと思います。パワーポイントでなくても、WordやExcelなどで作った文書も資料と呼ばれます。
さて、「資料」とは何でしょう?
まずは、「資料」という言葉の定義を確認してみましょう。
資料とは、辞書などによると、
- それを使って何かをするための材料
- あることをするうえで基となる材料
- 特に、研究や判断の基礎となる材料やデータ
と説明されています。
ここで目にとまるのは「材料」という言葉です。資料とは材料なのです。材料というのは、それを使うことで何か形を変えて別のものになるための元となるものです。つまり、資料とは仕事をするなかでの材料ということで、仕事で何かを考えたり、判断をしたりするための材料なのである、ということです。
資料はビジネスシーンの様々な場面でとても重要な役割を担っています。報告する、提案する、交渉する、などさまざまな場面で資料が使われています。それらのシーンでは、ビジネス上の何かの判断の材料として資料が使われているということが言えるでしょう。
そしてその材料、つまり資料ひとつでビジネスの結果が大きく変わることもあるほどです。
たった14ページで30億ドルを調達したプレゼン資料
アメリカでシェアリングエコノミーを展開するAirbnb(エアビーアンドビー)という会社が、創業初期に30億ドルの資金を調達した、伝説のプレゼン資料があります。その資料はたった14ページ、それぞれのページ構成もとてもシンプルです。しかし、重要なポイントがしっかり押さえられているのです。
ネットで公開されているので、「Airbnb 事業計画書」のキーワードで検索してみてください。当時のプレゼン資料を見ることができます。
もちろん、資料が綺麗にできているだけではこのような成果は得られません。魅力的なビジネスプランがあり、投資家を引き付けるようなプレゼンシーンもあったのでしょう。
逆説的ですが、いくらいいビジネスプランでも資料がイマイチだったらその良さを伝えることもできず、投資を得られることもないでしょう。
駅弁や空弁を買うときのことをちょっとイメージしてみてください。
並んでいるお弁当を見て、パッケージやお弁当の説明書きを見てどのお弁当を買うかを判断していると思います。そのパッケージや説明書きが「資料」なのです。美味しそうだと思われれば買ってもらえますし、いくらお弁当が美味しくても、パッケージや説明書きが美味しそうでなければ買わないでしょう。
資料の役割はアクションにつなげること
Airbnbの事例は、30億ドルの資金調達という、ほとんどのビジネスパーソンが経験しない非常に壮大なケースです。
しかし、大きくても小さくても、資料の役割はビジネスでの次のアクションにつなげることです。その判断ができるような材料を提供するのです。
「資料」もコミュニケーションツールですから、その役割は相手にアクションを求めることです。
報告を受けて理解する、判断し、指示をする。提案を受けて契約に進めていく。このようなアクションにつながらない資料は結果につながらない資料といえます。
資料とは、仕事で成果を出すための重要なコミュニケーションツールなのです。
資料作成はビジネスパーソンの必須スキル
このように、資料というものはビジネスシーンでとても重要な役割を担っています。前述しましたが、資料ひとつでビジネスの成果が大きく変わることがたくさんあります。
であるならば、ビジネスパーソンとして資料作成のスキルを身に付け、良い資料を作るようになることが大切です。
ただ、ここで課題があります。
資料作成のスキルについて体系立って学ぶ機会が少ない、ということです。会社の研修メニューに必須として資料作成が組み込まれている会社はそれほど多くありません。
そうすると、過去の資料を参考にして見様見真似で資料を作ったり、先輩の資料を真似したりしながら作ることになります。それらの資料が素晴らしい資料であればいい資料を作ることができるかもしれませんが、そうでなければ歴代の資料作成の悪いDNAを引き継いでしまうこととなります。
そして、そのような資料をお客様に提示してもお客様は「資料」について指摘したりアドバイスをしてくれたりすることはありません。どんな悪い資料でも受け取って話を聞いてくれるでしょう。そうすると、自分の資料は問題ないのだ、という誤った自己認識を持ってしまいます。
これから、このブログでは連載として、これまで我流で資料作成をしてきたという人や、資料作成を学びたくても社内ではきちんと学べる環境がない、という人に資料作成の基本を解説しています。