図解思考のすすめ ~仕事で一歩抜けるために

今回は、思考のテクニックとして、図をつかった仕事について書きます。

図を使った仕事をすると、コミュニケーションがとてもスムーズになります。それだけでなく、図解の思考回路ができると資料作成も速くなります。それだけでなく、情報整理などのにも効果的です。

ノートを取るときも図を使うといいですし、会議でホワイトボードを使って議論するときも図を書きながら進めると効率的に進めることができます。

資料作成も速くなりますし、何よりもわかりやすい資料をつくれるようになります。わかりやすい資料を作っていれば、おのずと上司や周りからの評価も上がっていきます。

図を使った仕事ができるようになると、あっという間に仕事のスピードはあがり、スピードだけでなく仕事の質も高くなるので、周りと比べても差がついてくるようになるでしょう。

ぜひチャレンジしてみてください。

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図解とは単なるお絵かきではない ~図解は成長につながる

ビジネス文書における図解は、単なる絵を書くことではありません。情報を論理的に整理し、それらの情報の関係性を図で示すことです。つまり、論理的思考力が必要になります。「昔から芸術センスがないから、図解は苦手だなぁ」ということはありません。美的センスや絵心は全く不要です。

普段の仕事の中で図解を使うようになれば、おのずと思考の時間が増えることになります。何度も何度も図解をしていくうちに、論理的思考回路ができあがり、周りよりも一歩、二歩と差をつけていくようになります。

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 図解に必要なプロセスを説明しましょう。

  • まずは、情報に含まれている要素を分解して抽出します。要素分解と呼んでいます。

  • そして、それらの要素を□などで囲みます。

  • 次に、それらの要素間の関係性を矢印などを使って表現します。関係性とは、順序、大きさ、時系列、位置、相関、因果などです。

このような手順で図解をしていくと、仕事がスムーズに進みだすのが実感できると思います。

図解は論理的思考を必要とする、とは言いましたが、そんなに仰々しく構えなくて大丈夫です。普段の仕事の中で、図を描くことを繰り返していれば、気づいたら思考回路が論理的になり始めてきます。そして、繰り返せば繰り返すほどその論理的思考のスピードが上がり、より複雑な状況や情報を簡単に整理できるようになります。

複雑な情報を図解でシンプルにする

イタリアの天才、レオナルド・ダ・ヴィンチは、

シンプルさは究極の洗練である

といい、

フランスの哲学者、ルネ・デカルトは

難問は分割せよ

と言いました。

仕事が難しく複雑になればなるほど、それをまずはシンプルにしてから取り掛かることがとても大切です。特に、多くの人がかかわる仕事ほど、難しく複雑な状況だとうまくいきません。シンプルに簡潔な方針、指示であることが重要です。

そのためには、論理的に整理して図解で示していくことが有効です。

次の図を見てください。いろいろな色のキャラクターが転がっています。ごちゃごちゃしてよくわからない状況です。

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これを少し整理してみましょう。キャラクターとその色でまとめてみました。

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だいぶわかりやすい状況になったでしょう。そして、これを表にしてみます。

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かなり情報がシンプルに理解しやすくなりました。そしてこれを定量的に示すと次の表になります。

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ここまで来ると最初の図とかなり違っているのがわかるでしょう。全部で221のキャラクターがあって、茶色が68個みたいな感じですぐに伝えることができます。

図解とは、論理的に整理をして、それをわかりやすい図で表現する、ということです。

もとは同じ情報であっても、理解のしやすさが格段に違います。どちらがいいかは明確でしょう。

図はコミュニケーションミスがなくなる

情報を伝達する手段として、文字、言葉などがありますが、ビジネスにおいては図が最も効率的でミスのない情報伝達の手段です。

どういうことでしょうか。

口頭で言葉を使って何かを伝えることをイメージしてみてください。

まず、人に何かを伝えるときは、自分の頭にある情報・イメージが源泉です。それは言語化されたものではありません。その情報を伝えるときに頭の中でイメージを言語に変換する作業が発生します。

普段、このようなことを意識していないと、「そんなことはないよ、頭の中で言語化されているよ」と思うかもしれません。

英語学習をイメージしてください。「私は自転車で学校に行きます。」という日本語を言語変換で「I go to school by bicycle」と英語に訳します。ですが、英語学習が進むにつれて、日本語→英語変換でなく、イメージ→英語というプロセスに変わっていきます。自転車で学校に行くイメージを頭の中で描いて、それを日本語を介さずに英語でアウトプットする、ということです。

そして、言語で情報を受け取った側は、その言語情報をイメージに置き換えます。

このコミュニケーションプロセスにおいては、3つの誤変換が発生し得ます。

ひとつは、発信側のイメージから言語化、そして受け手の言語からイメージ化です。もうひとつは、言語での伝達自体にも誤変換が生じる可能性があります。

会議の中で議論がかみ合わずに空中分解することがよくあると思います。このときは、この3つの誤変換が発生しているのです。 この3つの誤変換をなくすには、図を使ったコミュニケーションがベストです。イメージからイメージへと伝えることができるからです。

分かりやすい例で説明してみます。

みなさん、

○を3つ重ねて書いてください

さて、どのような図を書きましたか?

この二つの絵は、どちらも正解ですね。これが言語によるコミュニケーションミスです。

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そして、図は世界共通のコミュニケーションツールです。言語が違えど、図を描くことで言語的なギャップをカバーしたコミュニケーションができるようになります。

私が図解にこだわり始めた経験のひとつが、中国の大連でのオフショア開発でした。大連の開発チームのリーダークラスは日本語を話すことができ、ほとんどのケースでは困ることはなかったのですが、細かい議論や難しい議論になるとその言語ギャップが次第に出てきてました。それは、私たち日本人が英語でどこまで仕事をできるか、ということと同じです。そこに文句を言ってもしょうがないので、紙やホワイトボードに図を書きながらコミュニケーションをしはじめました。そうすると、言葉だけは伝えきれない情報が伝えられるようになってきました。

そして、面白かったのはこれは日本人同士の会話にも効果的であったことです。

図で会話する、ということは人間の本質的なコミュニケーションかもしれません。ある意味、象形文字ですね。

図解は四角と矢印から始めよう

図解の基本は四角と矢印です。要素分解した情報を四角で囲み、その要素間の関係性を矢印で表現します。たったこれだけで図解ができるようになります。

図解に慣れてくれば、要素情報を囲む図形をいろいろなものにしたり、関係性を表すのに矢印以外を使ったりしますが、四角と矢印だけでもほとんどのパターンを表現できます。

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資料は文章でなく図を使ってつくる

文字ばかりの資料で、読んでもよくわからない資料を見たことはありませんか?文字だけで難しい情報を正しく伝えることはとても大変です。また、読み手の読解力によっても理解度が変わってしまいます。

次のニュースを読んでみてください(企業名などは置き換えてます)。それほど難しい情報はありませんが、私は3回読んでも4回読んでもよくわかりませんでした。

【A社、1月既存店売上は35%増 客数は33カ月ぶり増加】

2月4日、A社 は、1月の既存店売上高が前年比35.0%増となったと発表した。客数は同17.4%増、客単価は同15.0%増。客数は、2013年4月以来、33カ月ぶりのプラスとなった。

新メニューも加わった「ナイスバーガー」が好調だったという。また、不採算店の閉鎖や改装なども寄与した。ただ、昨年1月は、異物混入事件で既存店売上高は38.6%減、客数は28.5%減、客単価は14.1%減と大幅に落ち込んだ月。この影響が一巡した面も大きい。

では、これを図解してみましょう。

まず、この記事のメインのテーマは「売上」です。そして、記事をよく読み解くと、売上を「客数」と「客単価」で表現しています。これを要素分解と呼びます。図解をするときのテクニックのひとつです。要素分解をしていくことで、表面的な情報だけでは見えづらいものが見えやすくなってくることがあります。これを図で書き現すと次のようになります。

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そして、この記事をもっと読み解くと、この客数×客単価=売上のそれぞれの要素について、年毎の増減を示しています。この情報を表で表してみましょう。すると次のようになります。

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この表が先ほどの記事で書かれていることです。どうでしょうか。文字だけの文章と図を使った情報伝達。明らかに図解の方が理解しやすいでしょう。また、図にすると浮かび上がってくる情報もあります。表に「新規店」と書いていますが、これは文章には書かれていません。ですが、新規店があるならばMECEの考え方で既存店があることがわかります。このように図に書くことで行間を抽出することができるようになります。

ここでは表形式の図解を例にしましたが、折れ線グラフや棒グラフでももちろん表現可能です。

情報は受け取り手が理解しないことには、まったく意味をなしません。自分がどれだけ頑張って長文を書いたとしても、相手が理解しない限りは意味のない仕事ということになります。

図を使った資料を作ることが相手にとってもプラスであり、自分の評価も上がりプラスになります。

昔話で図解のトレーニングをしよう

図解を使えるようになるためのトレーニングはいろいろな場面でできますが、昔話を使ったトレーニングがおすすめです。話の内容も知っているものを題材にして、ストーリーを完結に、必要な要素を抜き出して、正しく間違いなく相手に伝えられるような図解をしてみましょう。

例として、浦島太郎を図解してみましょう。有名な話ですね。浦島太郎が亀を助けて、竜宮城に行き、戻ってきて玉手箱を開けたらおじいさんになってしまった、というお話です。

これをどのように図解するか、という図解のアプローチを説明します。浦島太郎の話がうる覚えの方は、ちょっとググっていただいて、あらすじを読んでみてください。

まずは、要素分解します。そうすると、大切な要素として抽出されるのは、

  • 浦島太郎

  • カメ

  • いじめてる子どもたち

  • 乙姫

  • タイやヒラメ

  • おじいさんになった浦島太郎

などといった登場人物を洗い出せます。

また、

  • 砂浜

  • 竜宮城

といった場所の要素も出てきます。

このようにまずは要素が抽出できたら、次は、それらを構造化して図にします。構造化とは、要素の関係性を示す、と理解するとよいでしょう。そうすると、時間の流れや場所の位置関係などの関係性が見えてきます。

 下図に図解の例がありますが、縦軸に、

  • 海の上

  • 海の中

という場所の位置関係を示して、横軸は時間の流れを示しました。

また、登場人物を○で囲み、場所的要素を□で囲み、流れを→で表現しました。いかがでしょう。これは時間がかからずにすぐにできるトレーニングです。

昔話だと馴染みがありとっつきやすいですし、有名な昔話だとこの図を誰かに見せても評価してもらえるので題材としてはとてもおすすめです。

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図解のための3つのアイテム

 図解を使いこなしていくためには、図を書きやすい環境を整備しておくこともポイントになります。環境とは、いつでもどこでも図解ができるようにしておくこと、そしてストレスなく図解ができるようにしておくことです。

そのためにそろえておきたい3つのアイテムがあります。

方眼ノート、ちょっと太めのペン、コピー用紙です。  

まず、方眼ノートですが、図解をするときに方眼の罫線があるとフリーハンドで図や線が書きやすいからです。また、私はリングタイプのノートを横向きに使っています。リングタイプの理由は、半分に折って使うときに折りやすいからです。また、ノートに資料のイメージを書くことがありますので、A4横をイメージしやすいように横に使っています。

ペンはちょっと太めのペンの方がいいです。視覚的に見やすく頭に入りやすいですし、書きやすいです。ボールペンだとちょっと細いです。机の上に紙一枚を置いて書くときには、ちょっと太めのカラーペンの方がスムーズに書くことができます。ボールペンだと紙の上ですべってしまい、ちょっと書きにくいのでストレスになります。

100円ショップで20本くらいのセットで売っています。それで半年以上はゆうに持ちます。

3つ目のコピー用紙は、メンバーなどとコミュニケーションをするときに、すぐにその場で図解ができるように、と常に持ち歩いています。固定席だったときは、自分の机の横にコピー用紙の束で置いてましたが、いまはフリーアドレスで仕事をしているので、文房具を入れているケースに20枚くらいを常備しています。

いつでもすぐに書きやすい環境を整えておくことがポイントです。

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図解に便利なアイテムの紹介

ノートはロルバーンを使っています。5mm幅の罫線があるタイプです。書きやすいですし、ミシン目がついていて切りやすいし、かなり使いやすいノートです。

最近、ずっと使っているペンはuni ball AIRです。これは書き心地がかなりいいです。本当に楽で書きやすいです。

ノートは、持ち運び用に便利なのがMOLESKINEです。ちょっと値ははりますが、書きやすいですし、これの罫線付きのものを使っています。ハードカバーなので移動中にも比較的書きやすいノートです。

図解を学ぶのにおすすめの本

図解を習得するのに役に立った本を紹介します。どれも一度は読んでみるといいと思う本です。